政府の、税制の在り方を提言する税制調査会では、来年度の税制改正に向けた議論を開始しました。
中でも注目なのが、配偶者控除の廃止についてです。
数年前から、配偶者控除の廃止は色々と取り沙汰されてきましたが、いよいよ本格的に廃止の動きが高まりそうです。
それでは、具体的にいつから配偶者控除が廃止になるのか、また新たに導入を検討している夫婦控除について、現時点での動向を調べてみました。
なぜ配偶者控除が廃止になるのか?
配偶者控除が導入されたのは、昭和36年。
その頃の日本といえば、戦後の高度経済成長期にあたり、夫が働きに出て妻は専業主婦という家庭が多かった中、片働きで扶養者がいる世帯を、控除という形で手助けしようとしたのが、この配偶者控除の制度です。
しかし、現代の日本では女性も働きに出ることが増え、調べによると共働きの家庭は1114万世帯にのぼり、およそ全体の62%を占めているとされています。
そのような中、配偶者控除の要件である「103万の壁」以内に所得を抑えようと、働く時間をセーブしている人もいらっしゃいます。
パートを雇っているお店側も、年末調整の時期になると、勤務時間を減らすために人手不足になり、困っているということもあります。
そうした問題を解消するべく、配偶者控除の見直しについては数年前から議論が交わされてきました。
けれども、配偶者控除を廃止したからといって、全員が全員好きなように働けるわけでもなく、働きたいのに働けない方もいますし、専業主婦の家庭では税負担が増えることから、見直しについては慎重にするべきという意見も多くあります。
配偶者控除の廃止はいつから?具体的な動向について
現在話し合われている税制調査会は、2017年度の税制改正についてなので、もしここで配偶者控除の廃止が決定になれば、早ければ2018年1月から施行となりますが、「制度を決めること(配偶者控除の廃止)と実施はイコールではない」と、猶予の期間を設けることに含みをもたせる発言をしています。
つまり、もし仮に2016年の税制調査会で配偶者控除の廃止が決定になっても、必ずしも2018年からすぐに廃止にならない可能性があるということです。
夫婦控除とは?配偶者控除との違いについて
さて、配偶者控除の廃止とともに出てきたのが、「夫婦控除の導入」についてです。
この夫婦控除とはいったい何なのでしょうか?
出典:佐賀新聞
配偶者控除では、配偶者の収入額によって控除が適用になるかならないかが決められていましたが、夫婦控除の場合は妻のパートなどの収入額に関係なく一定の税額控除が受けられるというものです。
(しかし、この夫婦控除を適用するにあたっては年収の制限を設けることを検討しており、現段階では世帯の年収800~1000万円をめどに、夫婦控除の適用除外にすることを示唆しています。
また、夫婦の所得を合算した額から夫婦控除を差し引くのか、どちらか一方の所得から差し引くのかは、検討段階なので詳しいことは決まっていない状態です。)
つまり、今まで配偶者控除を受けるために収入額を調整していた方にとっては、パート代に関係なく控除が受けられるようになるため、勤務時間を制限しなくても良いということになります!
共働き世帯も増え、女性の社会進出も増えている中、妻の働き方の幅が増えると言えそうですよね。
ただ、この夫婦控除については、内縁関係、事実婚カップルへの対応が求められる可能性があるなど、課題も多くなりそうです。
実は2年前にもこの配偶者控除廃止について本格的な見直しが行われようとしましたが、その時は衆議院の解散とも重なり、与党の意向で見送りとなりました。
たくさん働きたい方にとっては歓迎できる一方、働きたくても育児や介護などで専業主婦にならざるをえない方にとっては負担が増えることなどから、配偶者控除のみならず、社会保障制度など総合的な観点からの見直しが必要となりそうです。
たくさんの家庭に影響を与える制度なだけに、今後の動向に注視していく必要がありそうですね。